スポットワークの利用状況について

2025.06.06

最新の労務関連情報

 近年、「スポットワーク」「スキマバイト」と呼ばれる、単発・短時間の柔軟な働き方が急速に広がりを見せています。特に人手不足が深刻化する中、繁忙期や急な欠員対応として、企業が即戦力を求める場面でのニーズが高まっています。こうした背景のもと、実際にスポットワークを導入する企業も増えていますが、一方で労務管理や安全配慮、保険加入への対応など、法的・実務的な課題も少なくありません。
本記事では、大阪労働局が行った調査結果を基にスポットワークの活用状況や、利用の際の注意点などをご紹介します。

 スポットワークの活用状況については、以下の通りになっています。

【全体的な活用状況】
・スポットワーク(スキマバイト)を「活用したことがある」と回答した企業は 12.7%。
・「活用したことはないが、興味がある」は 12.1% にとどまっている。

【業種別の活用率】
・製造業:5.5%
・非製造業:20.8%
・小売業:37.5%
・飲食店:57.9%

【企業規模別の活用率】
・99人以下:7.6%
・100~499人:8.5%
・500人以上:27.8%

【活用理由】
・繁忙期のみ人手が欲しい:60.5%
・欠員が充足しないため:47.4%
・(小売業・飲食業)採用手続きが簡易・欠員補充が主な理由

【活用しない理由】
・任せられる業務がない:79.2%
・働き手の人物像が不明確:19.5%
・その他(即戦力が期待できない、セキュリティ上の懸念等):6.9%

 スポットワークの導入は、特に非製造業や大企業を中心に徐々に広がりを見せていますが、全体としての普及率はまだ限定的です。人手不足を補う手段として一定の可能性があるものの、「任せられる業務がない」といった理由から、導入に消極的な企業も少なくありません。
 また、スポットワークを活用する上では、働き手の質への不安や、安全面・教育コストといった労務管理上の課題もあります。こうした背景から、業務の切り出しやマニュアル化など、スポットワーカーが担える仕事の設計が必要になるでしょう。
 今後、マッチング精度の向上や、柔軟かつ安心して働ける仕組みづくりが進めば、スポットワークはより多くの現場で有効な人材確保手段となる可能性があります。



 ここからは、スポットワーカーを雇う際の労務管理上の注意点について、いくつかご紹介します。

【労働条件の明示】
 スポットワークであっても、雇用契約の成立している労働者として働くことになるため、必ず労働時間や賃金等の労働条件を明示する必要があります。また、労働条件通知書の交付は義務になっていますので、労働者とのトラブル防止のためにも、必ず労働条件通知書を交付し、労働条件を明示しましょう。

【労災保険の適用】
 業務災害が起こった場合、スポットワークの方も労働者に該当するため、労災保険の補償の対象となります。業務災害が起きた際は、速やかな労災請求と労働基準監督署への報告が必要です。また、労災防止のため、作業手順の説明や安全教育を事前に行うことが重要です。

【正確な労働時間の管理】
 1日だけの勤務でも労働時間を正確に記録し、それに基づいた賃金の支払いが必要になります。法定労働時間(1日8時間)を超えて勤務した場合、時間外労働の割増賃金(25%以上)が発生します。また、午後10時~午前5時までは深夜勤務に該当し、こちらも割増賃金(25%以上)が発生します。
 1日の労働時間は1分単位で計算・支払いを行う義務があり、15分単位や30分単位での切り捨て処理は違法となりますので注意が必要です。また、業務上必要な着替えの時間・研修の時間等も労働時間に含めなければなりません。

【雇用保険・社会保険の加入要件】
 下記の要件を満たすと雇用保険・社会保険の加入対象になります。スポットワークであれば必ずしも雇用保険・社会保険の対象外となるわけではなく、短期雇用を繰り返していれば実質的な常用雇用とみなされる可能性があります。適切に管理が出来ていないと過去に遡って保険料の徴収や行政指導を受けるリスクがあります。

・雇用保険の加入要件
① 週所定労働時間が20時間以上
② 最低31日以上雇用する見込みがある
③ 学生ではないこと

・社会保険の加入要件(従業員数50人以下の企業)
① 週所定労働時間および月所定労働日数が常時雇用者の4分の3以上

・社会保険の加入要件(従業員数51人以上の企業)
① 週所定労働時間が20時間以上
② 所定内賃金が月額88,000円以上
③ 2ヶ月を超える雇用見込がある
④ 学生ではない

 スポットワークは、人手不足や突発的な欠員対応といった課題に対して、企業が柔軟に人材を確保できる有効な手段として注目されています。特に、飲食・小売といったサービス業を中心に導入が進みつつあり、今後さらに活用が広がっていくことが予想されます。
 一方で、労務管理や労働保険・社会保険の適用、安全教育の実施等の面で、従来の雇用とは異なる配慮が求められます。企業としての法的責任を果たしながら活用を進めるためには、制度への正しい理解と丁寧な運用が不可欠となります。

【引用】
大阪労働局職業安定部「令和6年度 第4回ハローワーク雇用等短期観測の結果」