2025年4月から「育児時短就業給付金」が創設されます
2025.03.14
法改正情報
2025年4月より、仕事と育児の両立支援の観点から、育児中の柔軟な働き方として時短勤務制度を選択しやすくすることを目的に、2歳に満たない子を養育するために時短勤務した場合に、育児時短就業前と比較して賃金が低下するなどの要件を満たすときに支給する「育児時短就業給付金」が創設されます。
【支給要件】
① 2歳未満の子を養育するために、育児時短就業する雇用保険の被保険者であること
② 育児休業給付の対象となる育児休業から引き続いて、育児時短就業を開始したこと、または、育児時短就業開始日前2年間に、被保険者期間が12か月あること
上記①②の要件を満たす方に対して、下記③~⑥のすべてを満たす月について支給されます。
③ 初日から末日まで続けて、雇用保険の被保険者である月
④ 1週間あたりの所定労働時間を短縮して就業した期間がある月
⑤ 初日から末日まで続けて、育児休業給付又は介護休業給付を受給していない月
⑥ 高年齢雇用継続給付の受給対象となっていない月
【支給額・支給率】
原則として育児時短就業中に支払われた賃金額の10%相当額を支給します。ただし、育児時短就業開始時の賃金水準を超えないように調整されます。
また、各月に支払われた賃金額と支給額の合計が支給限度額(459,000円)を超える場合は、超えた部分が減額されます。
なお、次の①~③の場合、給付金は支給されません。
① 支給対象月に支払われた賃金額が育児時短就業前の賃金水準(※1)と比べて低下していないとき
② 支給対象月に支払われた賃金額が支給限度額(459,000円)以上であるとき
③ 支給額が最低限度額(2,295円)以下であるとき
※1原則として育児時短就業開始前6か月に支払われた賃金(臨時に支払われる賃金と3か月を超える期間ごとに支払われる賃金を除く)の総額を180で除して得た額に30を乗じた額をいいます。ただし、育児休業給付の対象となる育児休業から引き続き育児時短就業を開始した場合は、育児休業給付の支給に用いた賃金月額をいいます。
【支給対象期間】
給付金は、原則として育児時短就業を開始した日の属する月から育児時短就業を終了した日の属する月までの各暦月について支給します。
下記①~④の日の属する月までが支給対象期間となります。
① 育児時短就業に係る子が2歳に達する日の前日
② 産前産後休業、育児休業または介護休業を開始した日の前日
③ 育児時短就業に係る子とは別の子を養育するために、育児時短就業を開始した日の前日
④ 子の死亡その他の事由により、子を養育しないこととなった日
【2025年4月以前から時短就業をされている方への経過措置】
2025年4月1日より前から2歳未満の子を養育するために育児時短就業に相当する時短就
業を行っている場合は、2025年4月1日から育児時短就業を開始したものとみなして、上記の要件や育児時短就業前の賃金水準を確認し、要件を満たす場合は、2025年4月1日以降の各月を支給対象月として支給します。
【転職先で育児時短就業給付金の支給を再開する場合】
2025年4月以降、新たに雇用保険の被保険者となった方が、以前に育児時短就業給付金の受給手続きを行っており、新たに被保険者となった事業所で育児時短就業給付金の支給を受けられる可能性がある場合、資格取得届に対してハローワークから交付する『雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)』に「育児休業等給付受給可」と表示されます(※2)。
※2以前に被保険者であった事業所で、育児休業給付金の受給手続きを行っていた場合も表示されることがあります。表示されていれば必ず育児時短就業給付金が受給できるわけではありません。
① 2歳未満の子を養育するために、育児時短就業する雇用保険の被保険者であること(※3)
② 新たに被保険者となる前の被保険者期間に空白期間がある場合は、その間に基本手当等の受給資格決定を受けていないこと
※3新たに被保険者となった事業所で時短勤務を行う場合のほか、新たに被保険者となった当初からパートタイムや短時間正社員の方であって、1週間当たりの所定労働時間が以前に被保険者であった事業所と比較して短い場合も含まれます。
育児時短就業給付金は、少子高齢化による労働力不足対策や、共働き世帯の増加に伴う育児負担軽減を目的として創設されました。
育児に伴い短時間勤務制度を利用することによる賃金の低下に対して、今まで公的な給付制度はありませんでした。今回の給付金創設によって、短時間勤務者の賃金減少による経済的な不安の軽減や、育児と仕事との両立が推進されることにより、男女ともに育児を行いながら自身のキャリア形成を目指すことのできる環境作りにも繋がることが期待されます。
ただその一方で、賃金の補填が行われることによって時短勤務を延長する労働者が増え、キャリアが限定されてしまう可能性や、時短勤務の固定化につながる可能性が懸念されています。
育児時短就業給付金の創設に向けて、短時間勤務制度を利用していく場合は社内規定の見直しや従業員への周知などを慎重に進めていく必要がありそうです。
【引用】
厚生労働省:2025年4月から「育児時短就業給付金」を創設します
厚生労働省:転職先の事業所で育児時短就業給付金の支給を再開する場合の留意点をお示しします