次期年金制度改正案で社会保険の加入対象の拡大が予定されています
2025.05.30
法改正情報
厚生労働省は令和7年5月16日、次期年金制度改正案を第217回通常国会に提出しました。
この改正案の趣旨は、社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化を図る観点から、働き方や男女の差等に中立的で、ライフスタイルや家族構成の多様化を踏まえた年金制度を構築するとともに、所得再配分の強化や私的年金制度の拡充等により、高齢期における生活の安定を図るため、被保険者の適用拡大、在職老齢年金制度の見直し、遺族年金の見直し、標準報酬月額の上限の段階的引き上げ、個人型確定拠出年金の加入可能年齢の引き上げ等の措置を講ずるとされています。
その改正案の中身として主に5つの項目が取り上げられています。
今回は一番インパクトがあると思われる【社会保険の加入対象の拡大】について取り上げます。
短時間労働者の加入要件の見直しがなされ、以下2点の加入要件の撤廃が行われる予定です。
① 賃金要件の撤廃
② 企業規模要件の段階的な撤廃
1つめの賃金要件の撤廃は、短時間労働者の加入要件の1つ「給与が月額88,000円以上」という、いわゆる年収106万円の要件が全国的に最低賃金が上昇していることを受けて、今後の最低賃金の引上げ状況を見極めつつ3年以内に撤廃予定です。
2つめの企業規模要件の撤廃は、現在、短時間労働者が社会保険に加入する企業規模は51人以上となっていますが、10年かけて以下のように段階的に対象の企業を拡大し、ゆくゆくは働く企業の規模にかかわらず加入することとなります。
将来的にこの2点の要件撤廃が実現されることで、社会保険の適用事業所では週20時間以上勤務すると学生以外の方は社会保険の加入要件を満たすことになります。
この要件撤廃によって社会保険料が増大する短時間労働者や事業主への国からの支援が検討されていますが、今後の人件費増は免れそうにありません。現時点では法案の段階であり、この要件撤廃が確定されてはいませんが今後の社会保険対象予定者を洗い出し、どれほど影響が出そうかをまずは予想し、場合によっては勤務時間の調整なども検討する必要がありそうです。
引用
・年金制度改正法案を国会に提出しました|厚生労働省
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00017.html)