賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和6年)

2025.09.05

最新の労務関連情報

 厚生労働省から、2024年に全国の労働基準監督署が行った「賃金不払い」に関する監督指導結果が公表されました。

【概要】
・件数:22,354件(前年より1,005件増)
・対象労働者数:185,197人(同3,294人増)
・金額:172.1億円(同70.1億円増)

 件数・対象労働者数・金額の全てにおいて前年より増加しています。このうち、約96%(21,495件)は監督署の指導によって賃金が支払われ、解決しています。しかし残りの約4%(859件)は未払いのままとなっています。

【業種別の件数】
以下の業種で件数が多くなっています。
・商業:4,494件(20%)
・製造業:4,297件(19%)
・保健衛生業:3,416件(15%)
・接客娯楽業:2,832件(13%)
・建設業:2,213件(10%)

【業種別の対象労働者】
以下の業種で対象労働者が多くなっています。
・製造業:46,120件(25%)
・保健衛生業:44,585件(24%)
・商業:24,206件(13%)

【業種別の金額】
以下の業種で金額が多くなっています。
・運輸交通業:70.2億円(41%)
・保健衛生業:25.6億円(15%)
・製造業:18.6件(11%)

【是正・送検の事例】
報告書には具体的な是正事例も紹介されており、以下のような原因で指導の対象となっています。

・割増賃金の基礎額から本来含めるべき手当を除外していた
・タイムカードと自己申告の乖離により残業代が一部未払いだった
・使用者の指示により行われている始業前の清掃作業を労働時間に含めていなかった

 さらに、悪質な場合には書類送検に至る事例もありました。例えば、労働者60名に対し2,500万円超の定期賃金を支払わなかったケースや、労働基準監督署に対して虚偽報告を行ったケースなどが挙げられています。

 賃金不払いは決して一部の事業場だけの問題ではなく、勤怠管理や賃金計算の小さな誤りが積み重なることで誰にでも起こりうる問題です。特に、割増賃金の計算基礎に含める手当の誤解、自己申告制の労働時間管理、始業前や終業後の作業の取り扱いといった部分はトラブルになりやすいポイントです。
 知らないうちに法令違反にあたることもありますので、定期的な点検と改善が欠かせません。

【引用】
・賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和6年)を公表します(厚生労働省)
・【別紙】監督指導結果等(厚生労働省)