スポットワーク利用時の労務管理上の注意点が公表されました
2025.09.12
最新の労務関連情報
近年、利用者が急増している「スポットワーク」について、労務管理上の注意点が厚生労働省より公表されました。
大手サービス「タイミー」が公表した「スポットワーク市場・クォータリーレポート(スポットワーク研究所)」によると、2024年11⽉~2025年1⽉期の全国のスポットワーク募集件数は350.9万件(前年同期⽐+43.8%)に達しました。
募集件数については三⼤都市圏以外での伸び率が顕著で、スポットワークの地⽅浸透が進んでいるといえます。
※三大都市圏…⾸都圏(東京都‧神奈川県‧千葉県‧埼⽟県)、関⻄圏(⼤阪府、京都府、兵庫県、滋賀県、奈良県、和歌⼭県)、東海圏(愛知県、岐⾩県、三重県、静岡県)
引用:スポットワーク市場・クォータリーレポート(2025年1Q(2024.11-2025.1) )
このように全国的に利用者が増え続けているスポットワークですが、利用増加に伴いトラブルも発生しています。
厚生労働省より公表されたスポットワーカーを使用する際の労務管理上の注意点について、その中から大きく分けて3つの注意点をご紹介します。
1 労働契約締結時における注意点
・スポットワークでは、事業主とスポットワーカーが直接労働契約を締結するため、
労働基準法等を守る義務は「労働契約を締結した事業主」に発生します。
事業主が掲載した求人にスポットワーカーが応募した時点で、労使双方の合意があったものとして労働契約が成立するものと一般的には考えられます。
・労働条件通知書をスポットワーカーに交付する必要があります
(雇用主が交付する場合もあれば、スポットワーク仲介事業者が代行して交付する場合もあります)。
・労働契約成立後の使用者側からのキャンセルについては、当該事由が合理的であることなど、
スポットワーカーにのみ不利な内容にならないよう留意する必要があります。
なお、一旦確定した労働日や労働時間等の変更は、労働条件の変更に該当し、
事業主とスポットワーカー双方の合意が必要です。
2 休業させる場合の注意点
労働契約成立後に事業主の都合で丸1日の休業、または仕事の早上がりをさせることになった場合は、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由による休業」となるので、スポットワーカーに対し、所定支払日までに休業手当を支払う必要があります。
※休業手当の代わりに、その日に約束した賃金を全額支払うことで差し支えありません。
3 賃金・労働時間に関する注意点
・実際の労働時間に対する賃金を労働条件通知書に記載された所定支払日までに支払わなければ、
労働基準法違反となります。
・事業主の指示により、業務に必要な準備行為(指定の制服への着替え等)や、
業務終了後の業務に関連した後始末(掃除等)を行った時間などは労働時間に当たります。
求人の際には、これらの時間も含めて始業・終業時刻を設定しましょう。
労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン 厚生労働省
その他にも、スポットワーカーが通勤の途中または仕事中にケガをした場合、
スポットワーカーは就労先の事業について成立する保険関係に基づき、
通常の労働者と同様に労災保険給付を受けることができます。
スポットワークは「柔軟に働きたい労働者」と「一時的な人手不足を補いたい事業主」双方にメリットがありますが、通常の労働者と同様に労働基準法の保護下にある点を忘れてはいけません。
利用者数が増加傾向にあるスポットワークは便利な制度ですが、事業主側の労務管理が不十分だとトラブルにつながります。
労働契約の取り扱い、休業時の対応、労働時間・賃金の正しい管理を徹底することが重要です。
詳細については、厚生労働省のリーフレット等をご確認ください。
いわゆる「スポットワーク」の留意事項等
(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59321.html)
使用者向けリーフレット(https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001512297.pdf)労働者向けリーフレット(https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001512298.pdf)