就業規則変更 意見聴取せず送検

2025.10.31

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 茨城・土浦労働基準監督署は、過半数代表者を適正に選出せず、就業規則変更時の意見聴取を行わなかったとして、学校法人温習塾(茨城県つくば市)および事務局責任者を労働基準法第90条違反の疑いで書類送検しました(令和7年10月2日送検)。

 さらに、同法人が締結していた36協定(時間外・休日労働に関する協定)についても、過半数代表者の選出が不適切であったとして無効と判断され、有効な協定が無いまま時間外労働を行わせたとして法人および理事長兼校長も労働時間違反(労基法第32条)の疑いで立件されています。

【事件の概要】
 令和6年3~4月ごろ、同法人は就業規則を変更しましたが、労働者の過半数を代表する労働組合が存在しなかったため、法人側が一方的に指名した者を「過半数代表者」として扱い、その者から意見を聴取し労基署へ変更届を提出しました。
 しかし、その代表者は民主的な方法で選出されていなかったため、労基署は「意見聴取が適正に行われていない」と判断。その結果、就業規則の変更手続きが無効とされました。
 また、同時期に締結された36協定も同様の方法で行われていたため、協定自体が無効とされました。これにより、令和6年4月1日~7月31日の期間中、有効な36協定が存在しない状態で教員2名に時間外労働をさせた疑いも持たれています。

 就業規則や36協定における「過半数代表者の選出」は、単なる形式的な手続きではなく、法的効力を左右する重要なプロセスです。
手続きを誤ると、
・就業規則の変更が無効となる
・36協定が無効となり、時間外労働がすべて「違法残業」とされる
といったリスクを負うことになります。

 今回の事件で問題となった「民主的な方法」とは、具体的には投票・挙手・労働者同士の話し合い等の方法が該当します。民主的な方法により選出され、使用者の意向に基づき選出された者ではないことが必要になります。また、管理監督者は過半数代表者として選出することが出来ないため注意が必要です。

 また、就業規則は単に作成・届出するだけでは効力を持ちません。労働者への周知がされていることも必要になります。
具体的には、
・社内掲示板やイントラネットで常時閲覧できるようにする
・各従業員に書面やデータで配布する
 など、「労働者がいつでも確認できる状態」にしておく必要があります。

 今回のように、就業規則の手続違反で司法処分にまで発展するケースは珍しいものの、今後手続きを行う際は正しい手順を確認していただくよう改めてご注意ください。

【引用】
労働新聞社「就業規則変更 意見聴取せず送検 代表者を指名で選出 土浦労基署」