2026年10月の法改正まとめ|人事労務で押さえる4つの変更

2026.10.02

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2026年10月の法改正で、人事労務に関わる変更はいくつもありますが、特に重要なものは次の4つです。カスタマーハラスメント対策の義務化、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策の義務化、パートタイム・有期雇用労働者の待遇ルールの改正、社会保険の賃金要件の撤廃です。この記事では、それぞれについて会社が講じる措置と見直す書類の有無を解説します。

2026年10月施行の法改正一覧と対象になる会社

厚生労働省は厚生労働省関係の主な制度変更(令和8年10月)についてで、10月に実施される制度変更を公表しています。このうち人事労務の実務に関わる項目と、対象になる会社を表にまとめます。

項目 施行 対象になる会社 会社の主な作業
カスタマーハラスメント対策の義務化 2026年10月1日 全ての事業主 方針の明確化と周知、相談窓口の設置、対処の手順づくり
求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策の義務化 2026年10月1日 全ての事業主 方針の明確化と周知、採用活動のルールづくり、求職者向けの相談窓口の周知
パートタイム・有期雇用労働者の待遇ルールの改正 2026年10月1日 パートタイム・有期雇用労働者を雇う事業主 労働条件通知書の明示事項の追加、正社員との待遇差の点検
社会保険の賃金要件(月額8.8万円)の撤廃 2026年10月 短時間労働者が社会保険の加入対象となる事業所 原則として新たな手続きはない。社内の手順書に月額8.8万円の要件を書いていれば修正する

なお、社会保険の保険料負担を軽減する仕組みとして、保険料調整制度もあります。この制度の対象は、企業規模要件の見直しにより新たに加入対象となる短時間労働者です。厚生年金の被保険者数50人以下の企業などで働き、標準報酬月額が12.6万円以下の人に限られます(社会保険の加入対象の拡大について)。

カスタマーハラスメント対策の10月義務化で会社が講じる措置

2026年10月1日から、全ての事業主に、カスタマーハラスメントを防止するための雇用管理上の措置が義務付けられます(労働施策総合推進法の改正)。カスタマーハラスメントとは、顧客等の言動のうち、社会通念上許容される範囲を超えたものによって、労働者の就業環境が害されるものを指します。電話やSNSでの言動も含まれます。

会社が講じる措置は、厚生労働省のリーフレット(詳細版)「令和8年10月1日から、カスタマーハラスメント対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます!」(PDF)に次のとおり示されています。

分類 会社が講じる措置(義務)
方針の明確化と周知 カスタマーハラスメントには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する方針を明確にして周知する
方針の明確化と周知 カスタマーハラスメントの内容と、あらかじめ定めた対処の内容(例:管理監督者に指示を仰ぐ、可能な限り一人で対応させない、犯罪に当たる可能性がある言動は警察に通報する、本社・本部等に情報を共有して指示を仰ぐ)を労働者に周知する
相談体制の整備 相談窓口をあらかじめ定めて周知し、相談窓口の担当者が適切に対応できるようにする
事後の対応 事実関係を迅速かつ正確に確認し、被害者に配慮する措置を行い、再発防止の措置を講じる
悪質な事案への備え 特に悪質なカスタマーハラスメントへの対処方針をあらかじめ定めて周知し、対処できる体制を整える
そのほかの措置 相談者等のプライバシーを守る措置を講じ、相談したことを理由に不利益な取扱いをしない旨を定めて周知する

会社が対処の内容を定めるときは、現場の勤務体制で実行できるかを確かめます。たとえば「可能な限り一人で対応させない」と定めても、一人で勤務する時間帯がある職場では、その時間帯には守れないことがあります。その時間帯には電話で管理監督者につなぐ、といった代わりの手順も決めておくと、現場で運用しやすくなります。

正当なクレームとカスタマーハラスメントの線引きは、現場の担当者がその場で判断しにくい部分です。リーフレットは、判断の観点として、言動の内容が契約内容から見て相当性を欠くか、言動の手段や態様が相当でないかを示しています。そのうえで、言動の経緯や頻度などを総合的に考慮することが適当としています。内容と手段・態様の一方だけが許容範囲を超える場合でも、該当することがあります。

このため、判断を現場の担当者一人に任せない仕組みを、会社として作っておくことをおすすめします。

  • 担当者が判断に迷った時点で、管理監督者に対応を引き継ぐ基準を決める(例:同じ要求が繰り返される、対応が一定の時間を超える)
  • 要求の内容と、言動の手段・態様を分けて記録する様式を用意し、会社が後から判断できるようにする
  • 要求の内容に理由がある場合でも、暴言や居座りなど手段・態様が許容範囲を超える言動には、要求への対応とは切り分けて対処する

対策を講じる際には、消費者の権利や、障害者差別解消法による不当な差別的取扱いの禁止、合理的配慮の提供義務に留意する必要があります。

求職者等に対するセクハラ対策の10月義務化と採用活動のルール

2026年10月1日から、求職者等に対するセクシュアルハラスメントを防止するための措置も、全ての事業主の義務になります(男女雇用機会均等法の改正)。求職者等には、求人に応募する人のほか、会社の採用活動に参加する人や、教育実習などの実習を受ける人が含まれます。

対象になる場面は、採用面接、会社説明会、社員への訪問、インターンシップなどです。オンラインやSNSを通じたやり取りも含まれます。行為者として想定されているのは、会社が雇用する労働者です。

会社が講じる措置には、次のものが含まれます(前掲のリーフレット(詳細版)による)。このほか、事実関係の確認や行為者への措置、再発防止などの事後対応も必要です。

  • 求職者等に対するセクシュアルハラスメントを行った者に厳正に対処する方針と、対処の内容を労働者に周知する
  • 求職活動等に関するルールをあらかじめ明確にし、労働者と求職者等の両方に周知する(例:面談の時間と場所の指定、面談の実施体制、やり取りに使うSNSの種類の指定)
  • 相談窓口を定めて求職者等に周知する
  • 相談者等のプライバシーを守る措置を講じ、労働者と求職者等に周知する

行為者への措置として懲戒処分を行う場合は、就業規則に根拠となる懲戒事由が定められている必要があります。このため会社は、就業規則の懲戒規定やハラスメント防止に関する規程に、求職者等に対するハラスメント行為が懲戒の対象として含まれているかを確認します。規定の対象が従業員に対する言動に限られている場合は、求職者等に対する言動を加える改定を検討します。

採用活動のルールは、面接や社員訪問に対応する社員が知らなければ守られません。会社はルールの周知先に、面接官を務める管理職や、社員訪問に応じる社員を含めます。求職者等への周知は、たとえば採用ページや、応募者に送る面接案内のメールに相談窓口の連絡先を載せる方法があります。

求職者等に対するパワーハラスメントに類する行為についても同様の方針を示すことは、義務ではなく望ましい取組とされています。

パートタイム・有期雇用労働者の待遇ルールの10月改正

2026年10月1日から、パートタイム・有期雇用労働法の施行規則と、同一労働同一賃金ガイドラインなどの告示が改正されます(同一労働同一賃金特集ページ)。会社が主に見直すのは、労働条件通知書、待遇差の説明方法、待遇差の理由の3つです。

労働条件通知書に追加する明示事項

会社は現在も、パートタイム・有期雇用労働者を雇い入れたときに、4つの事項を書面の交付等で明示することが義務付けられています。昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無、相談窓口です。改正後は、これに加えて、正社員との待遇の相違の内容や理由などについて説明を求めることができる旨(パートタイム・有期雇用労働法第14条第2項による説明)を明示します。

会社が差し替える書類は、10月1日以降に雇い入れる、または契約を更新するパートタイム・有期雇用労働者に交付する労働条件通知書のひな形です。厚生労働省は改正に対応したモデル労働条件通知書を同一労働同一賃金特集ページで公開しています。

待遇差を説明する方法

会社がパートタイム・有期雇用労働者に正社員との待遇の相違などを説明するときは、次のいずれかの方法による必要があります(2026年10月からパートタイム・有期雇用のルールが変わります―3つの改正ポイント|厚生労働省 Webマガジン)。

  • 資料を活用し、口頭で説明する
  • 説明すべき事項を全て記載した分かりやすい資料を交付する

どちらの方法でも、説明に使う資料が要ります。会社は、待遇ごとに相違の内容と理由を書き出した資料を、説明を求められる前に用意しておきます。

同一労働同一賃金ガイドラインで記載が追加される待遇

改正後のガイドラインには、賞与、退職手当、無事故手当、家族手当、住宅手当、福利厚生施設、病気休職、夏季冬季休暇、褒賞についての記載が追加されます。ガイドラインは、どのような待遇差が不合理になるかの考え方を示すものです。個別の待遇差が不合理かどうかは、職務の内容や配置の変更の範囲などの事情によって判断されます。

会社の対応として、まず正社員との間で差がある待遇を洗い出し、待遇ごとに支給や付与の目的を確認しましょう。そのうえで、待遇差の理由を合理的に説明できるかどうかを点検しましょう。

このほか改正後の指針では、公正な評価に基づいて賃金を決めることが示されています。職務の内容や成果、意欲、能力、経験などを公正に評価し、昇給に反映するといった内容です。正社員等への転換制度の内容や転換実績は、パートタイム・有期雇用労働者に明示するよう努めることとされています。

社会保険の賃金要件撤廃(2026年10月)と会社の実務への影響

2026年10月に、短時間労働者が社会保険(厚生年金・健康保険)に加入する要件のうち、賃金要件が撤廃されます。賃金要件は月額8.8万円以上で、年収に換算すると約106万円です。いわゆる「106万円の壁」と呼ばれてきた要件です。

対象になるのは、厚生年金の被保険者数が51人以上の企業(特定適用事業所)などで働く短時間労働者です。企業規模は、パートタイム労働者を含めた従業員数ではなく、厚生年金の被保険者数で判定します。従業員が100人を超えていても、被保険者数が50人以下なら、現時点ではこの要件の対象外です(労使の合意により任意で適用している場合を除く)。企業規模の基準は2027年10月以降、段階的に引き下げられます。

撤廃後の加入要件は、次の表のとおりです(社会保険加入の要件|社会保険適用拡大特設サイト)。

要件 2026年9月まで 2026年10月から
週の所定労働時間 20時間以上 20時間以上
所定内賃金 月額8.8万円以上 要件なし
雇用の見込み 2か月を超える見込み 2か月を超える見込み
学生 原則として対象外 原則として対象外

厚生労働省は、撤廃の理由として2点を挙げています。最低賃金が1,016円以上の地域では週20時間働けば月額8.8万円の要件を満たすことと、全国の最低賃金が1,016円以上となっていることです。このため、最低賃金額以上で週20時間以上働く人は、撤廃前から賃金要件を満たしています(社会保険適用拡大特設サイト)。

したがって、この撤廃によって会社に新たな加入手続きが生じることは原則としてありません。社内の手順書などに月額8.8万円を社会保険の加入条件として書いている場合は、その記載を削除または修正する必要があります。

例外は、最低賃金の減額特例の許可を受けている短時間労働者です。この人は、賃金が月額8.8万円未満なら被保険者とならず、本人が希望すれば任意で加入できます。加入に会社の同意は要りません。本人から加入の希望があった場合は、加入の手続きが必要です【要確認:任意加入の届出方法と、届出を行う者(会社か本人か)】。

10月の法改正に向けた自社点検チェックリスト

次の項目のうち、「いいえ」がある項目が、会社で見直しを検討する箇所です。

確認項目 関係する改正
カスタマーハラスメントに対する会社の方針を文書にし、労働者に周知したか カスタマーハラスメント対策
顧客等から被害を受けたときの対処の手順を、一人で勤務する時間帯も含めて決めたか カスタマーハラスメント対策
特に悪質な事案への対処方針と、対処する体制(判断する人など)を決めたか カスタマーハラスメント対策
面接や社員訪問の時間、場所、連絡手段のルールを決め、面接官と応募者に伝えているか 求職者等に対するセクハラ対策
応募者が使える相談窓口を、採用ページや面接案内などで応募者に周知したか 求職者等に対するセクハラ対策
就業規則の懲戒規定に、求職者等に対するハラスメント行為が含まれているか確認したか 求職者等に対するセクハラ対策
パートタイム・有期雇用労働者の労働条件通知書に、待遇差の説明を求めることができる旨を加えたか パートタイム・有期雇用労働法
正社員との間で差がある待遇を洗い出し、待遇ごとの目的を確認したか 同一労働同一賃金ガイドライン
待遇差の理由を合理的に説明できるか点検したか パートタイム・有期雇用労働法
待遇差を説明するための資料を用意したか パートタイム・有期雇用労働法
社内の手順書などに、月額8.8万円を社会保険の加入条件として書いていないか確認したか 社会保険の賃金要件撤廃

10月の法改正への対応をご相談ください

社会保険労務士法人 おぎ堂事務所では、10月の法改正に合わせた社内規程と書類の見直しをお手伝いしています。ご相談いただくと、4つの変更のうち自社で対応が必要な項目と、見直す書類(就業規則、ハラスメント防止に関する規程、労働条件通知書)が分かります。

求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止については、大企業の管理職を対象にした社内研修の実績があります。面接官を務める管理職向けの社内研修も承ります。

  • カスタマーハラスメント対策の方針文書と対処手順の作成
  • 採用活動のルールと、求職者向け相談窓口の案内文の作成
  • パートタイム・有期雇用労働者の労働条件通知書と待遇差説明資料の見直し
  • 面接官を務める管理職向けの、求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止の社内研修

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執筆 社会保険労務士法人 おぎ堂事務所

大阪市平野区の社会保険労務士法人です。1988年の設立以来、労務管理の支援を行っています。社会保険労務士11名が在籍し、中小企業から上場企業まで幅広い顧問先に対応しています。業務は、社会保険・労働保険の手続き、給与計算、就業規則の整備、労務相談です。

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