中小企業の新卒採用|有給取得率で選ばれる会社に

2026.07.30

コラム

日本の就活市場は、少子高齢化に伴い「売り手市場」が続いています。
そのため、今後は企業間での人材獲得が激化し、今以上に採用難易度が高まる厳しい状況になると予想されます。
こうした状況の中で、資金力に勝る大企業と初任給の引き上げで戦うことは、中小企業にとって現実的ではありません。
当記事では、給与以外の切り口で就活生に選ばれるための具体策として、「有給休暇の取得率アップ」に焦点を当てて解説します。

就活市場の現状

売り手市場を受けて、多くの企業が人材確保のために初任給の引き上げに動いています。
実際に新卒採用を行っている約7割の企業が初任給の引き上げを行っており、その平均額は9,462円となっています。
この引き上げ額を規模別にみると大企業に追随する形で中小企業も初任給を引き上げていることが分かります。

企業規模 初任給の平均引き上げ額
大企業 9,749円
中小企業 9,371円

(出典:帝国データバンク「初任給に関する企業の動向アンケート(2026年度)」)

しかし、初任給を上げれば既存社員の賃金も見直さざるを得ず、負担は毎年積み上がります。
中小企業は、大企業と初任給引き上げ額では並べても、続ける資金力には差があります。だからこそ、人材確保のためには給与以外のアプローチが必要になります。

では、就活生は志望企業を選ぶ際、給与以外には何を重視しているのでしょうか。

新卒就活生が志望企業を決めるポイント

就活生を対象とした「志望企業を決定する際に何を重視するか」というアンケートでは、次のような結果が出ています。

• 第1位:ワークライフバランスが確保できる
• 第5位:給料が高い
(出典:株式会社ワンキャリア「【26卒】就職活動に関するアンケート」)

近年の新卒就活生は、高収入よりも働きやすさを重視する傾向が強まっていることが分かります。
これは、中小企業にとってはむしろ好都合です。給与という「勝ちにくい土俵」ではなく、働き方という「工夫次第で勝てる土俵」に、就活生の関心が移りつつある状況だと言えます。

では、実際にワークライフバランスを実現するために、中小企業ではどのような取り組みができるか考えていこうと思います。

ワークライフバランスを実現するための取り組み

働きやすさを実現する取り組みのなかでも、当記事がおすすめするのは「有給休暇の取得率アップ」です。理由は次の2つです。

  • ① 低コストで始められる
    設備投資や勤怠システムの大幅な改修を必要とせず、比較的低コストで取り組めます。
  • ② 採用対策と法令遵守を同時に満たせる
    2019年4月に施行された「年次有給休暇の年5日の取得義務」という法律に直結するため、一つの取り組みで採用対策と法令遵守の両方に効果が期待できます。

有給休暇取得率アップに向けた方策

有給休暇を取得しない理由としては、主に次の3つが挙げられると考えられます(あくまで一つの見解ではありますが、多くの現場で見られるものです)。

  • 休むことへの罪悪感
  • やる気がないと思われることへの不安感
  • 休むと仕事が終わらなくなるという現実的な事情

これらを一つずつ解消していくことが、取得率アップの近道です。

① 休むことへの罪悪感 → 有給休暇の取得を仕組み化する

罪悪感の背景には周囲が有給休暇を取得していないという事情があると考えられます。そこで、有給休暇の取得を制度化・ルール化して有給休暇を取りやすい職場の雰囲気を醸成することが有効です。
具体的には、次の2つの制度をご提案いたします。

  • 有給休暇奨励日制度:労使協定が不要で、すぐに運用を始められます。ただし取得を促すだけで強制力はありません。
  • 計画的付与制度:労使協定の締結が必要ですが、労使協定の締結は必要ですが、保有日数のうち年5日を残した上で、それを超える部分を計画的に割り振れます。

② やる気がないと思われることへの不安感 → 評価基準の見直し

長時間働く人が評価をされる仕組みになっていることが原因のひとつと考えられます。評価基準そのものを見直しましょう。
たとえば、業務を完遂しながら、残業時間も少なく、有給休暇をしっかりと取得している従業員を高く評価します。あわせて、そうした働き方を部下に浸透させた上司も高く評価します。こうすることで、まず上司が積極的に有給を取得し、部下がそれに追随する好循環が生まれると考えます。

③ 休むと仕事が終わらなくなる → 業務の進め方の見直し

忙しくて休むことができないということが発生する根本的な原因として、特定の人に業務が偏っている、あるいは業務の効率が悪いといった問題が潜んでいます。
そのため、業務面の見直しを行うと解決すると考えられます。

  • 業務の属人化を解消し、特定の人に業務が偏っていないかを洗い出す
  • マニュアルの整備やツールの活用を進め、誰が休んでも業務が止まらない体制を整える

こうした取り組みを進めることで、従業員が取りたい日に有給をとれる状態に近づいていきます。

まとめ

現在の採用活動においては、中小企業も大企業と同様に「初任給の引き上げ」という、給与面で勝負をしています。
単年であれば対応できても、既存社員の賃金への波及まで含めてこれを毎年続けるとなれば、資金力の差がそのまま効いてきます。
そこで、有給休暇の取得率アップなどのワークライフバランスを実現するための取り組みを行うことで、従業員の健康維持や生産性向上、企業イメージの改善といった効果がもたらされます。
こうした働きやすい環境は、中小企業が就活生に示せる優位性となり、人材を安定して確保するための基盤となるはずです。

ただし、有給休暇の取得促進は「制度を作れば終わり」ではありません。
特に計画的付与は労使協定の締結と就業規則への定めが前提となります。
そのうえで自社の業務実態に合わせて設計して初めて、「働きやすい会社」という言葉が就活生に届く実態を伴います。

当事務所では、就業規則の整備や労使協定の作成をはじめ、御社の実情に合った制度設計をご支援しています。

「採用に効く労務環境を整えたい」とお考えの際は、お気軽にお問い合わせください。

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